輝きが向こう側へ!

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思いついたことをそのまま記事にしている何の脈略もないブログです。アニメやゲームの感想等を掲載。

【ネタバレ・感想】心機一転、新たな作品に取り組んで欲しかった『薄暮』

タイトル:薄暮
制作会社:Twilight Studio
原作・監督・脚本・音響監督:山本寛
キャラクターデザイン・総作画監督:
近岡直
音楽:鹿野草平
キャスト:小山佐智/桜田ひより、雉子波祐介/加藤清史郎、他
配給:プレシディオ 公開日:2019年6月21日 上映時間:52分

薄暮(はくぼ)

薄暮(はくぼ)

 

福島県いわき市の女子高校生・佐智(声:桜田ひより)は、2011年3月11日に起きた東日本大震災で心に傷を負い、それ以来、友達や家族から距離を置きながら、人にも恋にも無関心に生きていた。佐智は幼いころからヴァイオリンを続けており、高校で音楽部に所属しながら、文化祭で四重奏を披露するため、日々練習に追われている。同じころ、震災で実家が帰宅困難地域となり、いわきに避難してきた男子高校生・祐介(加藤清史郎)は、当たり前の景色が失われてしまう現実を目の当たりにし、“美しい今”を絵画として残そうと描き始める。祐介は、展覧会に出品する夕景画を描くため田園地帯を訪れ、夕映えのなか、佐智と出会う。二人は心の交流を続け、やがて恋へと発展していく……。

MovieWalker

 



 『山本寛オリジナル作品「薄暮」アニメ制作プロジェクト』というクラウドファンディングの企画が2017年に立ち上がりました。映像演出家として、心機一転してどういった作品が作られるのかと思い、支援してみることに。それからしばらくしての今年6月、試写会が開催されたのですが、それには都合が悪く参加できず。実際に本編を観ることができたのは7月に入ってからとなりました。
 

今を描いた作品ではあるものの、チグハグさが気になった
 上映時間52分。映画としては短編にあたるものでしたが、そう短いとは感じずに観ることができました。そう感じたのは作劇としてまとまっていたからでしょう。部活動と帰路のシーンを交互に配置されていて、構成としては単純ながら頭に入りやすい作り。日常の描き方としても、美麗な風景描写も相まって、リアルな日常とリンクさせてくれるものでした。物語としては、どストレートな青春もの。とはいえ、ここ何年間か続いていた青春ものの映画の流れとは外れたもので、言ってしまえば古めかしい感じの昭和の青春ものに近しいものでした。この手の話、嫌いではないものの、今を描いている作品としては、個人的には何だか引っかかるものでして、LINE的なものや、放射線量測定値のニュース映像といった、今だなと感じさせるものがありながら、言葉のセンスが今時ではないので、チグハグなところが気になってしまいました。監督が考えた物語をストレートに表現するには自身で脚本を担当されるのがベストだとは思いますが、自身の発想だけにはとどまらないものを作るためには、若手の作家さんに任せるか、アドバイザー的なポジションの方を用意したほうが良かったのではないかと感じました。とはいえ、昔ながらのものが好きだという方もいるでしょうし、その辺りの評価は個人の感性によって変わってくるでしょう。


背景描写が美麗で、ご当地アニメとしての説得力を感じる
 いわき市が舞台。自分自身、いわき市には足を運んだことはないものの、田舎の風景については見慣れたもので、アニメなので表現としては可笑しいかもしれないですが、嘘が少ないなと感じるほど、リアルな風景が描かれていました。これは作品タイトルともなっている『薄暮』を描く上で、この風景で感動するものか?という疑問が生まれてしまっては作品として成立しなくなるので、美麗な背景描写が出来ていた時点で作品としては成功したといっても過言ではないと感じました。そしてそれは、ご当地アニメとしての説得力にも繋がります。おそらく、地元の方が観れば、こうも生まれ育った町を丁寧に描写してくれたのかと、感動させられるものであったと思います。


正直余計だなと思ったこと
 本編の通して観た中で気になったのは、監督がかつて携わった作品のセリフパロディがあった点です。『らき☆すた』であった、「くさいよねー」のくだり。これが本編中2回も入れられている。そして、ところどころで登場する見たことがあるようなキャラクター達。心機一転、新たな作品に取り組まれるものと思っていたので、正直余計だなと思いました。これは、人によってはファンサービスになりえるので、それほど気にはならないのですが、一番気になったのは次の点。アニメプロデューサーが憎いことは重々承知ですが、その気持ちをこの作品にわざわざ入れる必要はなかったということです。これらの点は、知らない人からすれば何のことやらとなることばかりですので、真摯に福島の方に向けての作品作りをして欲しかった。その一点に尽きます。


クラウドファンディングの良さと難しさ
 気になった点はありますが、総体的に見て悪い作品ではありません。メインキャストのお2人も、この作品特有の青さを表現するにはハマったキャスティング。サブキャストが有名どころの声優さんなので、その辺りの台詞の掛け合いは安心して眺めていられる。ただ、個人的に気になる点があるだけで、観る人が観れば、何も気にすることなく純粋に楽しめる作品になっていることでしょう。自分自身にとっては、クラウドファンディングで作られる作品の、良さも難しさも知ることが出来た作品となりました。