タイトル:天気の子
制作会社:コミックス・ウェーブ・フィルム
原作・監督・脚本:新海誠
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:田村篤
音楽:RADWIMPS
キャスト:森嶋帆高/醍醐虎汰朗、天野陽菜/森七菜、他
配給:東宝 公開日:2019年7月19日 上映時間:114分
家出し、離島から東京へやってきた高1の少年・帆高。見知らぬ土地でやっとのことで、怪しげなオカルト雑誌のライターという仕事を見つける。しかし、彼のこれからを示唆するかのように、連日雨が降り続ける。そんなある日、帆高は陽菜という少女と出会う。ある事情を抱え、弟と2人で明るくたくましく生きる少女には不思議な能力があった。
MovieWalker
歴史的大ヒットとなった『君の名は』から早3年。新海誠監督の新作『天気の子』が公開されました。自分は、公開日からしばらくしたタイミングで鑑賞したのですが、観る前に、ネタバレとはいかないまでも、今作ではかつての新海誠が帰ってきただとか、ゲームみたいだとか、そういったフンワリした感想は耳に入っていました。さて、それを踏まえて観た感想は。
物語の根底はあるものは今まで通り
大ヒット作を生んだ影響は大きく受けていて、雨降る東京市内の景色が美しく、現実にある会社名だとか製品名がこれでもかと映り込んでくる。作画のクオリティが上がり、各企業が協賛。これが成功後の作品かと感じるばかりなのですが、そんなことはお構いなしに、物語の根底はあるものは今まで通りのボーイ・ミーツ・ガールなのでした。ほんと、ブレない。とはいえ、この基本があるからこそ、ある一定層に受けるのだろうなと納得なのです。観終わった後に感じるモヤモヤ感
あえて前作と比べるならば、ゲームで例えると、『君の名は』が何度も何度もプレイしてようやく導き出したトゥルーエンドだったのが、『天気の子』では何の気なしの初回プレイで辿り着いたグッドエンド2な感じ。(トゥルーエンド>グッドエンド1>グッドエンド2)なので、『君の名は』ほどの大団円な感じはせず、観終わった後に何か物足りなさを感じてしまうのでした。男の子と女の子、2人にとってはグッドエンドでも、天気の巫女である女の子を地上に返したことで東京の大部分は水没。さらには、あの拳銃の件はそもそも何だったのかと、思い返してみると、実は何も解決していないのではないか。このままだと、後で2人がとんでもない目に遭うんじゃないかと、何かやりそこねたルートがあるゲームの様な終わり方をしていて、考えれば考えるほどスッキリしない。物語の序盤も序盤、あの船上でのたっかいビールを買うかどうかを自販機の前で悩むところで選択肢が出てきて、それを買わないだけで大きく話が変わってきていたのではないか。終盤での男の子の衝動的な判断に、それはやっちゃいけないだろうと大人の目線でどうしても観てしまいがちだけれども、これはこれで突き進んでOKなんじゃなかろうか等々、考え出すとキリがない。かと言って映画を見直したところで、途中で選択肢が出てくるわけもなく、なんだかモヤモヤするのでした。いろいろ考えたところで、なんともし難い気持ちは変わりない
まず観終わって思い出したのが『やるドラ』というゲーム。アニメを観ていくうちに選択肢が登場し、その選んだ選択肢によって物語が分岐していく内容。この『天気の子』に関しては、全編映像が奇麗なので、様々なシーンが意味ありげに見えてきて、ここで選択肢が登場してもおかしくないのではないかと思えてしまう作り。それもあって、ゲーム的に観えた面もありそうです。さらに色々と考えてみたところ、いや、『やるドラ』ではなく、『街』や『428 封鎖された渋谷で』といったサウンドノベルの方が近いのではないかとも思いだしたり。登場人物1人1人がそれぞれの物語を持っていて、その行動如何でそれぞれ物語が干渉しあうパズル的な内容。それを思いついたとき、物語を構成する方法論として、このパズルを組み立ててから物語に仕上げたのではないかという結論に勝手に至りました。本筋は男の子と女の子の話でも、何か裏で動いているような気がする作りがゲーム的に感じるのではないかなと。そして、ゲームとして何かやり損ねた感もそこから来るものではないかとも感じたのでした。ただ、そう結論付けたところでなんともできず。このパズルの組み替え方次第で様々なエンディングを迎えることになるのですが、それができるのも監督だけなので、なんともし難い気持ちは変わりないのです。