輝きが向こう側へ!

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【ネタバレ・感想】物語のプロセスにやや難有り、作りたての情熱を感じたいなら『夜明け告げるルーのうた』

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タイトル:夜明け告げるルーのうた
制作会社:サイエンスSARU
監督:湯浅政明 脚本:吉田玲子、湯浅政明
キャラクター原案:ねむようこ 音楽:村松崇継
キャスト:ルー/谷花音、カイ/下田翔大、他
配給:東宝映像事業部 公開日:2017年5月19日 上映時間:107分

「夜明け告げるルーのうた」 Blu-ray 初回生産限定版

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漁港の町・日無町。中学生のカイ(声:下田翔大)はもともと東京に住んでいたが、両親が離婚したため父と母の故郷であるこの寂れた町に移り、今は父親と日傘職人の祖父ととともに暮らしている。両親への複雑な胸中を口に出せず鬱屈した気持ちを抱えるカイにとって、作曲した音楽をネット上にアップすることが唯一の心のよりどころだった。クラスメイトの国男(声:斉藤壮馬)と遊歩(声:寿美菜子)に彼らのバンド・セイレーンに勧誘され、彼らが練習場所にしている人魚島にしぶしぶ向かったところ、人魚の少女・ルー(声:谷花音)が姿を現す。楽しそうに歌い踊るルーと一緒に過ごすうちに、カイは少しずつ自分の気持ちを話せるようになっていった。しかし古来より日無町では人魚は災いをもたらす存在とされており、ふとしたことからルーと町の住人たちとの間に大きな溝が生じてしまう。

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 『夜は短し歩けよ乙女』上映開始前にこの映画の予告が流れていました。この短期間に連続で長編を公開するとは無茶なことをするなと思うも、同監督作品を立て続けに映画館で観る機会はなかなか無いので観てみることに。

 中学生の少年カイと人魚の少女(幼女?)ルーの物語ということで、どうしても宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』と比較されがちですが、自分自身がポニョを観ていないもので、その比較はできず。しかしながら、ルーのお父さんが『パンダコパンダ』(高畑・宮崎タッグ作品)に登場するパパンダに似ていましたし、物語の構成的にもこの『パンダコパンダ』をどこか髣髴とさせる内容でした。宮崎監督に対してなんらかの影響を受けているのは確かでしょう。得体は知れないものの、やさしさの固まりみたいなところが実にパパンダ。興味がある方はこちらも観てみてはどうでしょうか。古い作品ですが傑作です。ただし、子供の頃に観てこその傑作ですので、大人が観るとそうでもないかも。子供の頃にワクワクして観ていたのに、大人になってから観て、その面白さが感じられなくなり愕然とするという。
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 さて、本編についてですが、実にストレートなお話。『夜は短し歩けよ乙女』が、このテンションについて来られなければ来なくていい!というお話でしたが、こちらは万人向け。とはいえ、アニメーションそのもののテンション感はいつものままですので、個性が如実に作品に表れる監督さんだなと改めて感じました。誰とも相容れない思春期真っ只中な中学生が主人公カイ。そんな彼を、人魚の少女ルーとの出逢いが変えてくれるという物語。この物語を脚本で全てを語るのではなく、アニメーションそのもので語る、アニメーションとして真っ当な作り。テンション感は全く違いますが、『レッドタートル』のような、この人本当にアニメ作りが好きなんだなと感じさせる作品に仕上がっていました。ですので、この絵作りに感化されるかどうかでこの作品の評価がガラッと変わることでしょう。個人的には、物語のプロセスを丁寧にしたほうが完成度が上がっていたのではないかと、少々惜しいなと思う出来に感じました。ルーやバンド仲間たちとの交流、それに伴ってのカイの成長。その他にもいろいろあるのですが、物語を構成するプロセスをうまく踏めていないのか、唐突に感じる面が多々ありました。構成を見直すと、グッと良くなる可能性があるだけに惜しいと感じたのですが、これは、この絵を作りたいんだ!と足し算での作り方ゆえのこと。作りたての情熱を感じるためには、このままで正解なのかもしれません。

 序盤のシーン、主人公たちが通る商店街がやけに薄暗いなと気になっていましたら、あとからの町の説明で納得しました。日無町という、その名の通り日が当たらない漁港町が舞台。日に弱い人魚が住むのに良い立地なのです。それが、物語の終盤で日除けになっていた人魚島が崩れ、町に光が差し込みます。この序盤と終盤の絵作りの対比は見ものですので、2度目を観られる方は注目してみてください。


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