輝きが向こう側へ!

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輝きが向こう側へ!

思いついたことをそのまま記事にしている何の脈略もないブログです。アニメやゲームの感想等を掲載。

【ネタバレ・感想】これまでとは別物の、大衆向けに仕上がった集大成的作品『君の名は。』

 新海誠監督の最新作『君の名は。』。ほとんどの作業を1人で行ってしまったという処女作『ほしのこえ』から14年。この間、数々の作品を発表されていますが、実はそれらをきちんと観る機会なく、この最新作を観ることになりました。とはいえ、新海監督作品に対するイメージはありまして、美術的な観点では好みではあるものの、痛みを伴った『蒼さ』が感じられるストーリーが苦手という勝手なイメージがありました。これが合っているかはともかく、苦手意識がありましたので、これまで観てこなかったのです。さて、そのイメージが踏襲された内容であったのかそうでなかったのか。続いて本編の感想です。


タイトル:君の名は。
原作・監督・脚本:新海誠
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督安藤雅司 音楽:RADWIMPS
キャスト:立花瀧/神木隆之介、宮水三葉/上白石萌香 他
配給:東宝 公開日:2016年8月26日 上映時間:1時間47分
 

 

千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に小学生の妹と祖母の3人で暮らす女子高校生・宮水三葉(声:上白石萌音)は、憂鬱な毎日を過ごしていた。町長である父の選挙運動や家系の神社の古き風習などに嫌気が差し、友人たちと小さく狭い町を嘆き、東京の華やかな生活に憧れを抱いていた。周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れは日々強くなっていく。そんなある日、三葉は自分が男の子になる夢を見る。見慣れない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。三葉は、戸惑いながらも念願だった都会での生活を思いっきり満喫するのだった……。一方、東京で暮らす男子高校生、立花瀧(声:神木隆之介)は、日々、友人たちと楽しく過ごしイタリアンレストランでバイト中。同僚の奥寺先輩へひそかに好意を寄せている。ある夜、瀧は奇妙な夢を見る。行ったこともない山奥の町で自分が女子高校生になっているのだ。繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている記憶と時間……。出会うはずのない瀧と三葉は、やがてお互いの存在を知る。入れ替わってしまった身体と生活に戸惑いながらも、その現実を少しずつ受け止める二人。運命の歯車がいま動き出す……。

MovieWalker

 



■新海監督の集大成的作品

 緻密に描かれた田舎町の風景、そして、それとは対照的な近代的な町並みの中での日常。そして、アニメーションだからこそ成立する絵画的な夜景。そんな監督らしさは本作に踏襲されていましたが、ストーリー面については、全編がシリアスになることなく適度にコミカルな要素が取り入れられていて、驚くほど大衆向けの作品に仕上がっていました。好きな人は好きな『蒼さ』から、多くの人の共感を呼ぶ『青さ』へ。昔からのファンの方には特有のケレン味があまり感じられず、物足りなさがあったかもしれませんが、自分としては妙にソワソワすることもなく、映画をまっすぐ観ることができて良かったでした。この感覚を覚えるのは久々。その昔、ジブリ映画(ナウシカラピュタ等)の世界観に惹き込まれ、食い入るように観ていたあの頃の感覚が、少し戻ってきた感じがしました。

 シーンの割り振りや、ストーリー構成がしっかりまとめられている上に、胡気味良いテンポで進んでいきますので、だれることなく最後まで観切れるのはよくできているなと感じたところ。1時間47分という上映時間も丁度良い。(瀧・三葉の2人が惹かれあう描写が少々弱いが、この時間に収めるには仕方なしか)シーンによって時間軸が違ったりしますので、下手な割り振りをしてしまいますと、観る側に混乱を与える場合があるのですが、逆にそれを演出に取り入れられていました。あえて流さなかったシーンを答え合わせのごとく後から流す。これには面白いことをするなと感じました。この演出方法がこの作品のキーになっていたのでは。監督が、基本的に同じコンセプトの作品を作り続けていることもあって、この手の話の構成を熟知されているのでしょう。集大成的作品であることは間違いありません。


■メインキャストの演技について

 声優陣に関しては、立花瀧役は数々の劇場用アニメ作品で声優経験がある神木隆之介さんで、宮水三葉役は『舞妓はレディ』で主演を務めた上白石萌音さん。(かみしらいしもねさん、本名の方が役名っぽい)舞台経験の少ない俳優さんが声優さんをやりますと、ある種大げさな演技をしなければならないところを、テレビドラマ等の様な素に近い演技にしてしまいがちですが、どちらも違和感なくといいますか、若いのにしっかりとした演技をされていました。神木さんが、上白石さんが演じた役というよりも、役をそのまま受け入れていました。他にも、市原悦子さんや長澤まさみさんらもマッチしていましたね。むしろ、やたらめったにいい声の立花父に、「あっ!井上和彦さんだ!」と声優さんの顔が浮かんでしまうのでした。


■作品の本質を評価する声でヒットが生まれる時代に

 アニメ作品の場合、ジブリ映画や、ドラえもんクレヨンしんちゃん・コナン・ポケモンといったファミリー向けでないとヒットは難しいのですが、『シン・ゴジラ』に続いて東宝が全国上映と力を入れて、目論見通りの大ヒットを記録。『シン・ゴジラ』も同じようなヒットの仕方でしたが、実際に観た方の声の大きさ、SNSでの評判の拡散が大ヒットに繋がった様です。『シン・ゴジラ』にしても、『君の名は。』にしても、10年前であれば、玄人には評価はされても一般にその評価が届かず観客動員数は振るわない状況だったのでは。作品の本質を評価する個々の声によりヒットが起こりうる時代に。とはいえ、その声をコントロールすることが必要で、それには東宝の戦略のウマさが見え隠れしているのでした。



■映画を観終わってから聞こえてきた会話

 映画を観終わってシアターを出る際に男性2人組の会話が聞こえてきました。「彼女いなくても良かったやろ!」。話し掛けられた方が、この映画は彼女と見るものだろうと話していたのでしょうか。確かに良くできた構成の映画。たとえ隣の席に彼女がいなくても楽しめることでしょう。そんな彼らと、周りに数多くいる彼女連れで来た方々とのギャップが、なんだか微笑ましかったのでした。その後、家路につく途中にいろいろと考えてみた結果、やっぱり彼女と観るのがいいんじゃないかと、楽しいんじゃないかと思えてきた夏の終わりなのでした。かなしみ。

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