輝きが向こう側へ!

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【ネタバレ・感想】作品の勢いに呑み込まれればそれでいい『仮面ライダー1号』

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 先日、仮面ライダー1号を鑑賞。仮面ライダーそのものに興味があるというよりは、御年70歳の藤岡弘、さんがヒーローものの主演を45年振りに務めるという奇跡を観に行く感覚でした。本作は賛否両論があるらしいのですが、実際に観てみた感想をまとめてみたいと思います。

タイトル:仮面ライダー1号
総監督:金田治 脚本:井上敏樹
音楽:坂部剛、鳴瀬シュウヘイ、中川幸太郎
キャスト:本郷猛/藤岡弘、、天空時タケル/西銘駿、立花麻由/岡本夏美 他
配給:東映 公開日:2016年3月26日 上映時間:1時間36分

今から45年前。悪の秘密結社ショッカーの手によって改造人間となった1人の男がいた。その日から、人間の自由を守るために戦い続けてきたその男の名は、本郷猛(藤岡弘、)。この世に誕生した最初の仮面ライダーである。長年に渡って海外で悪と戦ってきた猛は、1人の少女の危機を知り、急遽帰国。少女の存在が、かつてのショッカー最高幹部・地獄大使(大杉漣)を復活させるために必要なのだ。猛は、仮面ライダーゴースト=天空寺タケル(西銘駿)や、その仲間たちと出会い、ショッカーが少女を狙う理由を探る。その一方で、あまりにも過酷な日々を過ごしてきた猛の肉体は、既に限界に近づいていた……。少女の危機、そして新たな組織ノバショッカーがもたらす日本最大の危機に、伝説の戦士・本郷猛が“変身”する。戦い続けてきた本郷猛を待つものは、安らぎか、それとも……?

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 ここ数年、歴代仮面ライダーが登場するお祭り的な映画が製作されてきました。それらの作品を観てはいないものの、評価は芳しくなかったと聞いていました。本作はどうなのかと危惧していましたが、実際に観てみたところ、その流れから外れた作りでした。作品の構造としては、現在放送中の『仮面ライダーゴースト』の番組フォーマットをそのまま使用して、仮面ライダー1号がゲスト出演する形と思って頂ければイメージしやすいのではないでしょうか。藤岡さんがNHK大河ドラマ『真田丸』の撮影と重なっていたようで、主演でありながら出番が少なかったのですが、『仮面ライダー響鬼』の時の細川茂樹さんの状況と似ているなと感じました。彼もまた大河ドラマの撮影が重なり、物語の序盤は出番が少なかったでしたが、それでも存在感で主演の肩書きを通していたところもまた似ている気がしました。それにしましても、当時33歳でおじさんライダーと言われていた細川さんに対して、70歳で主演を務めた藤岡さんは何者なんだと思うばかり。昭和の仮面ライダーには、現在放送中のライダーが日本で戦っている間、これまでのライダーは海外で戦っているという設定がありましたがそれを踏襲。今の今まで1号は戦い続けていた無茶な設定に対しては、普通であれば引退しているだろうと考えてしまうのですが、物語冒頭の藤岡さんのアクションを見て、これなら今まで戦っていてもおかしくはないなと納得せざるを得ないのでした。


現在の藤岡さんに合わせた1号のデザイン

 重量感のある仮面ライダー1号のデザイン。これまで戦い続けてきた中での強化の結果なのでしょうか。現在の変身後の姿としてしっくりきました。ライダーと言うと細身で機敏なアクションがイメージされますが、この1号のアクションは、見た目通りのパワータイプ。SEやCGの効果で一撃一撃がとても重く感じました。動きに関しては無駄な動きがなく、時代劇の剣術アクションの様。対してゴーストチームはガムシャラな動きを見せていまして、1号だけではアクションとして大人しいので、良いアクセントになっていました。ライダー眼魂(アイコン)を使ったフォーゼからドライブの技が見られましたので、近年のファンの方も盛り上がるところがあったのでは。自分自身としては、カブト以降を全話通して観ておらず、基礎知識を持ち合わせている程度。あのライダーの技かと判りはするものの落ち着いて観ていたのでした。


旧来の組織に対しての『ノバショッカー』、作中での存在意義は

 世界征服を企む悪の秘密結社『ショッカー』と、その『ショッカー』から分裂した新たな組織、経済支配を目論む企業『ノバショッカー』。この2つの組織の対立にライダーが巻き込まれていく内容です。旧来の『ショッカー』が登場するのですが、怪人のデザインがいかにもレトロで、昔の技術でほそぼそと活動してきた感じが泣かせます。それに対して『ノバショッカー』は近代的なデザイン。新旧の対比が見た目で分かりやすく表現されていました。『ノバショッカー』については、秘密結社という体ではなく企業で、日本中のエネルギーを手中にし、国相手にして新エネルギー供給の契約書にサインをさせていました。(これは企業なのか??)見た目はスタイリッシュですが、やっていることはヤッターマンのドロンボー一味みたいなことをしているので滑稽に見えてしまいました。しかしながら、ドロンボーほどの魅力は感じられない『ノバショッカー』。この作品において『ノバショッカー』という組織を登場させたのは、旧来の『ショッカー』を過去のものという立場にするためであったと見受けられました。非効率な局地的行動をする『ショッカー』に対して、インフラを制圧してしまう『ノバショッカー』。昔の特撮ものを見て、もっと効率的な世界征服の方法があるだろうとツッコミたくなることが多々ありましたが、それに対するアンチテーゼが少なからずあったのでしょう。


ツッコミどころが多いものの、45年という月日の経過がズルい

 ストーリーに関しては、前述した通り『仮面ライダーゴースト』を軸にしたものとなっていました。この手の話によくある、先輩ライダーを邪険に扱うことはなく、初代仮面ライダーとしてリスペクトされた内容。人によってはゴーストチームが引き立て役になっているので面白くないかもしれませんが、純粋に『仮面ライダー1号』としてのストーリーを楽しみにしていた方には、ゴーストチームが好印象に映ったのでは。そして、この作品のテーマが『生命』であるので、同じテーマを持ったゴーストとのコラボはうまくはまっていたように感じられました。『生命』とは何かとタケルに問い、最後の別れのシーンでその答えを問うという流れ。初代から現代のライダーへと伝えられる言葉。45年の月日を経てそれが行われるとは、やはり奇跡の映画でした。

 とは言うもののかなりツッコミどころが多い映画であったのは確かです。本郷がかつて、おやっさんとして慕っていた立花藤兵衛の孫娘、立花麻由。この子をショッカーから守るために帰国。最初は、自分を捨てて海外に行ってしまったと思っていた麻由でしたが和解し、これまでの時間を取り戻すために本郷と麻由は2人の時間を楽しむのでした。女子高生と食事を楽しむ本郷、女子高生と太鼓の達人に興じる本郷、女子高生とメリーゴーラウンドな本郷。そんな楽しそうな姿を見て、あのCMを思い出しました。



 この時のせがた三四郎の様に、楽しそうな藤岡...いやいや、本郷猛の姿にうらやま...いえいえ、微笑ましかったのでした。他にも、本郷が麻由が通う学校の特別講師として『生命』について語るシーンには、NHK『課外授業ようこそ先輩』の 藤岡弘、の回にしか見えないので思わずツッコミたくなるのでした。そんなツッコミどころが多い本作ではありますが、麻由役の岡本夏美さん、そしてゴーストチームもそうですが、皆さん若いのに演技がしっかりしているので、思いのほか普通に見れてしまった印象でした。これが不慣れな方が多いと物語の世界観に入り込めない状態に。それがなかったのはキャスティングの勝利でしょう。


自分の琴線に触れた2つの台詞

 不意の台詞に感動させられたシーンが2箇所ありました。まずはネオサイクロン搭乗シーン。古ぼけた『立花レーシングクラブ』の看板が置かれた倉庫の中で、かつての恩師『立花藤兵衛』との写真を拾う本郷。そして、ネオサイクロンに乗り込み、写真を懐に忍ばせてのこの一言「おやっさん、一緒に行こう」。おやっさんを演じた小林昭二さんの顔が思い出されて思わず涙が。この台詞を45年経った今聞けただけでも価値がある映画だったのでは。

 もう1シーンはまさかまさかの地獄大使のシーン。ただのやられ役かと思いきや、最後の最後で見せ場がありました。ノバショッカーが共通の敵となり、共闘するライダーと地獄大使。この戦いでノバショッカーを倒したものの、瀕死の状態となった地獄大使が本郷に向かって言った「頼む!俺と戦ってくれ!」の言葉。これに対して本郷は「体をいたわれ、地獄大使」と言って去ってしまう。白髪が乱れた状態の地獄大使には老いを感じ、同じ時代を生きた本郷は今もなお若々しい。この対比が物悲しい。仮面ライダーと戦うことが敵役である怪人としてのアイデンティティー。それを感じさせたこの台詞に、『仮面ライダー』というTV番組のフォーマットの中での怪人の生き様に対するメタファーがあって、この台詞を地獄大使に言わせることができたのはこの作品が仮面ライダーの始まりである『仮面ライダー1号』だから成立するのだなと感慨深く思ったのでした。


そんなあなたにオススメです

 映画の最後には仮面ライダー本郷猛からのメッセージが。まっすぐすぎるヒーローからの言葉。現代のヒーローものでは表現されることが無くなったものがあって、古くからのファンの方にはストレートにこのメッセージが響いたのではないでしょうか。

 この映画を観終わって、オススメしたい気持ちもなくはないのですが、オススメする相手を間違えると、とんでもない目に遭いそうですので非常に難しいです。45年後の『仮面ライダー』として思い入れたっぷりで見られても困るし、かと言って思い入れが無いと良さが分からない。あれこれ細かいことは気にしないで、作品の勢いに呑み込まれればそれでいい。そんなフィーリングが合うかどうかそれ次第の作品でした。劇場にはお子さんたちもたくさんいたのですが、声をあげてみている子がいまして、本郷猛に対して「カッコイイ!」と言っていました。これが戦闘シーンではなく、お寺で座禅を組んでいるシーンでなのです。なんと渋好みのお子さんなのだろうか。そんな渋好みのお子さんをお持ちの親御さん、この映画オススメですよ!(そんなにいない)



おまけ(舞台挨拶)

 舞台挨拶付の上映でしたので、映画の終了後に『仮面ライダーゴースト』の天空寺タケル役の西銘駿さん、深海マコト役の山本涼介さん、御成役の柳喬之さん、月村アカリ役の大沢ひかるさんが登壇。劇中の衣装を着ての登場でしたので、とても安直な表現ですが、スクリーンから出てきた感覚がありました。まずは、それぞれ決め台詞付の自己紹介。ここで小さなお友達の歓声があがると思いきや、おっさ...おにいさんからの「タケルゥウウウウ!!!!!!」の声が。ゴーストの熱烈なファンの方の声が耳に残りました。個人的には大沢さんの若干恥ずかしげな「化学の力でイチコロよ♪」が聞けたのが良かったでした。舞台挨拶の内容としましては、撮影の合間には斉藤さんゲームをやっているというお話や、マコトがため口で本郷に話しかけるシーンには周りのメンバーも緊張したというお話などがありました。小さなお友達も大きなお友達も盛り上がったのは変身シーンの再現。まずはレジェンドライダー。フォーゼの変身を山本さんが。ドライブの変身を西銘さんが再現されました。このドライブの変身がキレッキレで、本人より本人なんじゃないかと思ったのでした。(どういう感想だ)続いて、本来のゴースト、スペクターの変身。柳さんが無音だと寂しいから声をつけてくれる人を募集して、子供たちからも声が挙がっていたのですが、結局柳さんは「自分がするんですけどね」とまさかのスルー。そして、変身ポーズをする2人。途中のラップな音声を柳さんが。最後の最後で柳さんが分け入り「カイガンゴエモン、歌舞伎ウキウキ、乱れ咲き!!」と言って、美味しいところを持っていく始末。丁度この日放送された回の内容に沿ったネタをぶっこんできたのでした。

 舞台挨拶中、出演者の皆さんが声援にこたえて手を振ったりしていたのですが、中でも柳さんの対応が御成そのまんまなリアクションを取られていて、子供たちはうれしかっただろうなと思ってみていました。映画を観ていても感じていたのですが、しっかりした演技をされているゴーストのメンバーを見て、ドラマとしてゴーストは楽しめる作品なのだろうなと興味が沸きました。ベテラン竹中直人さんとも共演しているのですから、吸収することも多いでしょうし、これからもっと良くなっていくことでしょう。今から観始めても間に合うの?『仮面ライダーゴースト』。


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